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高松高等裁判所 昭和53年(行コ)4号 中間判決 1979年5月25日

控訴人

川口寛之

ほか三一名

被控訴人

通商産業大臣

江崎真澄

主文

被控訴人は本件訴訟を承継した。

事実《省略》

理由

控訴人らが、昭和四八年八月二七日内閣総理大臣を被告として本訴を提起し、請求棄却の第一審判決に対し、昭和五三年五月一日本件控訴を提起したこと、本件訴訟は、内閣総理大臣が、原子力基本法等の一部を改正する法律(昭和五三年法律第八六号)三条の規定による改正前の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下改正前の法律を旧規制法、改正後の法律を新規制法という)二三条一項に基づき、昭和四七年一一月二八日四国電力株式会社に対しなした伊方発電所の原子炉設置許可処分の取消を求めるものであることは記録上明らかである。しかるところ、発電の用に供する原子炉(ただし新規制法二三条一項二号ないし四号に該当する原子炉を除く)の設置許可及びその取消は、原子力基本法等の一部を改正する法律の前記規定により、通商産業大臣の所管とされ、昭和五四年一月四日右法律の一部の施行に伴い、同法附則三条の規定により、旧規制法の規定による内閣総理大臣の前記許可は新規制法二三条一項一号の規定による通商産業大臣のした許可とみなされ、通商産業大臣が、同日以降主務大臣として、発電の用に供する前記原子炉の設置許可及びその取消の権限を有するものであることは、新規制法の関係各規定の定めるところである。行政事件訴訟において、訴訟係属中、当事者である行政庁が廃止されその権限が他の行政庁に移管された場合は勿論、当事者である行政庁が存続しながらその権限が法律の改正により他の行政庁に移管された場合もまた、その移管により権限を承継した行政庁は、当事者である行政庁の廃止にともない権限を移管された場合に準じ、民訴法二〇九条、二一三条の準用により、法律上当然に訴訟を承継し、先に法務大臣によつて指定された訴訟代理人のある限り、訴訟手続は中断しないものと解されるから、承継人又は相手方は、いずれも訴訟手続の受継に関する手続を要せず、裁判所は、この場合、承継人又は相手方の申立により、当事者の表示を承継人に変更するをもつて足りる。当事者である行政庁が廃止されないで抗告訴訟の対象である行政処分をする権限のみ移管された行政庁が民訴法七四条にいう訴訟の目的たる債務を承継した者にあたるとの控訴人らの主張は採用することができない。してみれば、被控訴人(通商産業大臣)は、原子力基本法の一部を改正する法律の前記施行により、法律上当然に本件訴訟を承継し、昭和五四年一月八日上申書をもつてその旨を明らかにしたから、当裁判所は被控訴人を本件訴訟承継人と認める。

よつて、行訴法七条、民訴法一八四条に従い、主文のとおり中間判決する。

(小西高秀 古市清 上野利隆)

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